創部72年の歴史をもつ、大東文化大学 空手道部。大東文化大学の卒業生で、オリンピック日本代表チームのアナリストとしても活躍する大徳紘也氏を監督に迎え、全日本大学空手道選手権大会への出場、勝利を目指して練習に励んでいます。
今回は、そんな歴史ある空手道部について、大徳監督と主将の山崎和さんにインタビューしました。おふたりのお話を聞けば、「従来の空手のイメージ」がきっと変わるはずです。
また、取材日の2024年5月12日は、大東文化大学埼玉東松山キャンパスにてオープンキャンパスに合わせて「空手道部 練習会」が開催。多くの高校生が参加していました。
インタビュープロフィール
大徳 紘也(だいとく ひろや)監督・2019年就任
山崎 和(やまざき やまと)主将:スポーツ健康科学部 健康科学科 4年生
大学での学びをきっかけに日本代表チームのアナリストに
初めに、大徳監督の直近のご活躍についてお聞かせください。東京オリンピックでは、アナリストとして日本代表チームを支援されたそうですね。
2021年の東京オリンピックでは、空手の日本代表チーム初のアナリストとして、データ分析・活用を通して選手をサポートさせてもらいました。
アナリストの仕事を端的に説明すると、競技のなかで起こっているあらゆることを数字にし、感覚ではなく確かなデータとして可視化していくことです。そのデータを使って、現状の把握はもちろん、さらなる躍進に必要な要素、効果的な戦略立案のヒントを探ります。
野球やラグビーなど、球技スポーツではすでにメジャーな職種なんですよ。
代表チーム初のアナリストを務められたとのこと、参画にあたって障壁はあったのでしょうか?
やはり初めての取り組みですから、必要性を理解してもらうための工夫は必要でしたね。
具体的には、初めから改善案を提言するのではなく、まずはデータの提示にとどめました。現在の日本代表選手の強さ、弱さはどんな点にあるのかを整理し、スタッフに伝えたんです。その内容にチーム全体が納得してくれて、本格的に携わることになりました。
ちなみに、代表チームへの提案にあたっては、同じ武道である柔道のアナリストの方に相談へ伺いました。そこでさまざまなアドバイスをいただけたおかげで代表チームへのスムーズな参画につながったので、事前にしっかり準備をしておいてよかったです。
大徳監督がアナリストの道を開拓することになったきっかけを教えてください。
大東文化大学のスポーツ科学科のゼミで、野球の研究をしている先生に師事したことがきっかけです。先生の研究について話しているなかで、「空手の場合はどうなの?」と質問される機会がありました。そのコミュニケーションをヒントに、統計学やゲーム理論の知識も活用しながら、空手の分析をするようになって。それがアナリストとしての一歩でしたね。
空手道部で、自分で考え、困難を乗り越える力を身につけてほしい
空手道部の監督に就任されて、どんな気づきがありましたか?
私はこれまで、いい指導者の条件は「選手に答えを示せること」だと思っていました。しかし、実際に自分が指導者になった今は、「選手に多くのヒントを与えられること」だと考えを改めています。
監督になりたての頃は、熱心に指導しなければという想いから、部員たちに強い口調で厳しい言葉をかける機会もたくさんありました。彼らに課したハードルも高かったと思います。しかし、それではついてこられない学生がたくさん出てきてしまいました。
そこで部員たちと腹を割って話し合い、ときには口論もして、チームが強くなるために必要なことを一緒に考えたんです。その結果、自分のスタンスを転換。同じ目線に立ち、「彼ら自身が考えること」を尊重するようになりました。
考え方の擦り合わせは痛みも伴う作業でしたが、お互いに学びがあり、結果的に部員たちとの関係も改善したので、取り組んでよかったと思っています。
空手道部の活動をとおして、部員たちにどんなことを学んでほしいですか?
今の時代、指示されたことをこなすだけの人材は、社会ではなかなか活躍できません。部員たちには、常に自分の頭で考えて、壁を超えていく力を身につけてほしいですね。
指導にあたって答えではなくヒントを与えること、学生と目線を合わせることの背景には、そんな想いがあります。彼らが恐れずに自分の意見を発信し、トライできる環境を用意することで、能動的に動く力を磨いてほしいなと。
ですから、部員たちが誤った選択をしたときも、よく考えて挑戦したのであれば怒ることはありません。とはいえ、いつまでもやみくもに挑戦するだけでは成長できないので、経験を積むなかで選択に必要な思考力、十分に考えて行動する習慣をつけるように促しています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
武道のひとつである空手は、どうしても「怖い」「厳しそう」といったネガティブなイメージを抱かれがち。でも、そんな方にこそ大東文化大学の空手道部を見てほしいです。きっと、部員たちのにぎやかな様子に驚きますから。空手が笑顔で楽しく取り組めるスポーツであることを、私たちを通して知ってもらえたらうれしいです。
勝つための方法を考え抜いて、柔軟であることを選んだ
初めに、山崎主将の空手経験についてお聞かせください。
兄の影響で小学校一年生から空手道場に通いはじめ、現在までずっと続けています。
大東文化大学への進学を決めた理由のひとつも、空手です。若くて実績もある大徳監督が指導されていると知り、ぜひ入部したいと思いました。
大学の空手道部への入部以降、成長を感じている点はありますか?
私は組手をやっているんですが、高校時代までは、なかなか試合で勝てなくて……。そこで大学に入ってからは、「自分が負けた選手の試合スタイル」をどんどんマネしはじめました。今の自分のやり方に固執せず、より強い、勝てる試合スタイルに潔く切り替えることにしたんです。その姿勢を徹底するうちに、これまでは負けてばかりだった相手にも勝てるようになり、成長を感じています。
「強い選手のスタイルを自分のものにする」というアイディアには、どのようにたどり着いたのですか?
私が入部した当初はまだ部員数が少なく、高校時代はあまりいい戦績を残せなかった自分が、大きな大会を含めてほとんどの試合に出場することになりました。そこで「このままではいけない、部のために勝たなければいけない」と強く思うようになったんですよね。
そんなとき、大徳監督が「自ら考える時間」を与えてくれて。勝つために何ができるかを必死に考え、より強い試合スタイルを貪欲に模索するようになりました。
全員の力を合わせるから、全員で喜びを分かち合い、成長できる
空手道部の活動スケジュールを教えてください。
水曜日を除き、週に6日は活動しています。平日は17〜19時の2時間、土日は9〜12時の3時間、みんなで集まって練習に励んでいますよ。
部活の雰囲気はいかがですか?
明るくてオープンな雰囲気です。傍から見たら部員の学年を想像できないくらい、みんな仲が良く、上下関係がありません。
とはいっても、単にゆるいわけではなくて。成長するために、勝つために、一人ひとりがしっかりと意見を口にします。また、大徳監督は練習メニューも学生主体で考えさせてくれるので、練習も部員たちでつくりあげています。
そんな練習のなかで研究した技が試合で通用したときは、飛び上がるくらいうれしいです! 試合に出ていない部員も一緒に出した結果なので、みんなで喜びます。
主将として心がけていることはありますか?
主将だからといって、自分ばかりが仕切らないように意識しています。空手道部は、みんなでつくるチームなので。
そのため、部内には強豪校出身の強い選手もいますが、その部員ばかりに練習を任せることもしません。一人ひとりのいいところ、いいアイデアをみんなでシェアし、「空手道部」として強くなりたいと思っています。
最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
大東文化大学の空手道部の最大の魅力は、元気で自由な雰囲気と、全員で一緒に成長できることです。私たちが練習している様子を見ればきっと伝わると思うので、ぜひ一度見学に来てください!
大徳監督、山崎主将、ありがとうございました。