令和5年度日本芸術院会員に就任した土橋靖子書道学科元特任教授と日本芸術院賞を受賞した書道学科の高木厚人名誉教授に学園栄誉章が贈られ、授与式が9月18日に板橋校舎で開かれた。
土橋靖子元特任教授の受章は平成29年度日本芸術院賞受賞の際に受章されて以来、2回目の受章となった。
大東文化学園栄誉章は、学術・文化・スポーツ等の分野での業績が顕著であり、学園及びその設置する学校の名を高めた教職員や団体に対して贈られる。
令和5年度日本芸術院会員について、日本芸術院長より文部科学大臣に上申し、令和6年3月1日付けをもって、文部科学大臣より発令されている。
土橋氏は【第一部(美術)】第四分科(書)で任命された。
日本芸術院は毎年卓越した芸術作品または芸術の進歩に貢献する顕著な業績があると認められている者に対して恩賜賞・日本芸術院賞を贈っている。高木氏は書の部門において令和5年第10回日展 出品作である「山ざと」の作品で受賞された。
石井淳子理事長 挨拶
この度、土橋先生が日本芸術院会員に就任され、高木先生が日本芸術院賞を受賞されたこと、大変喜ばしくお祝い申し上げます。先生方の素晴らしいご功績は既に広く知られていますが、改めてこのように認められたことは本当に素晴らしく、学園としても名誉の限りです。
大東文化学園は、その名に「文化」と掲げられている通り、常に文化と向き合ってまいりました。「文化」のもとで多くの学生たちを輩出し、その分野を極めてきた歴史があります。その中でも「書」は非常に重要な一部を占めていると思います。さまざまな分野がある中で、「かな文字」は日本独自の素晴らしいものであり、日本文化を支え、また文化を創り出してきた存在だと考えています。
おりしも今、源氏物語がブームになっているのはまさに「かな文字」が日本文化を育て、発展させ、世界最古の日本文学を生み出した証です。土橋先生のご活動を『AERA』で拝見し、素直な気持ちで書に向き合い、心で受け止めていく文化を極めてこられたと承っております。
また、高木先生は「かな書道」において新たな世界を切り開いてこられたと伺っています。それぞれの道でのご活躍は、書の文化性や芸術性を高め、その発展に尽くされてきたことが本当に素晴らしいと思っております。「かな文字」の美しさ、芸術性の高さは、今こそ日本人の心を打つタイミングであり、学園関係者としても大変名誉に思っております。
今回の会員の就任、そして受賞は、私たちに勇気と希望、元気を与えてくださるものでした。土橋先生、高木先生が今後とも益々ご活躍されることを願っております。それを確信いたしております。
甚だ簡単ではございますが、お祝いの気持ちと学園からの感謝の気持ちをお伝えし、私からのご挨拶とさせていただきます。本日は誠におめでとうございます。
受章者挨拶
土橋靖子元特任教授
本日はこのような大変ありがたい授与式にお時間をいただき、場を設けてくださり、本当にありがとうございました。私個人的には、3年ぶりに板橋キャンパスにお邪魔させていただき、大変懐かしく思っております。
この度、日本芸術院会員として、3月1日に文部科学大臣から拝命を受け、7月8日に高木先生と共に宮中で天皇皇后両陛下にご挨拶をさせていただきました。先ほどお話がありましたとおり、日本芸術院会員としての責任の重さを感じておりますが、自身の作品における信じる世界を究めるべく、これからも努力してまいります。
同時に、書の世界の伝統とその発展に尽力できればと考えております。そのためには、大東文化大学で学ばれる若い人たちの力が絶対に必要です。
最近、「SHOGUN」という映画がエミー賞を受賞し話題となっていますが、真田広之さんが「正統」を大事にして努力してきたと聞き、私も書の正統をコツコツと地道に究め、そこに新しい息吹を吹き込むことが私たちの世界にとって重要だと感じています。先人たちに感謝し、後進のために道を創ることが必要だと確かに仰っていましたが、まさに私も同じ気持ちです。
これからもご指導いただきたいと思いますし、大東文化大学の発展や、そこで学ぶ優秀な学生との出会いを大切にして、今後も精進していきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。本日は本当にありがとうございました。
高木厚人名誉教授
本日、このような授与式を開いていただき、本当に嬉しく思っております。大東文化大学との関わりが、私の進む道をずっと決めてきたと言っても過言ではありません。大学時代には、まだ書の道に進もうとは決めていませんでしたが、その頃から教員と学生との間で様々な話が交わされ、交流の場があったことで、教育に携わりたいという気持ちが大学時代に強く芽生えてきました。
その後、将来に関しては二転三転しましたが、二十代の最後に書で行こうと決めてからは、いろいろな展覧会で仲間や先輩たちと交流を深める中で、初めて大東文化大学という存在を知ることになります。三十代、四十代になってからは、書の仕事を通じて出会った尊敬する先輩が皆大東文化大学の卒業生であり、その話を聞くうちに、私もその環境で仕事をしたいと強く思うようになりました。
四十代の時には非常勤講師としての立場になり、その後、今年の3月に仕事を退くまでの25年間、この大学で働かせていただきました。若い人たちと共に書の個展について語り合ったり、お互いに批評し合ったり考えたりする中で、徐々に自分の進むべき道が見えてきました。大東文化大学が育ててくれたと言っても過言ではなく、常にそう思っています。ですから、大東文化大学の存在や、教育の場における学生との交流が何よりも大切であり、その中で仕事をさせていただけたこと、また学生たちの力はかけがえのないものでした。
書の道には師匠がいて仲間がいますが、若い人たちの考え方は非常にストレートで、それに触れるたびに新たな考えを得て、自分自身も前に進むことができました。来年の3月で一つの区切りを迎えますが、これからは異なる形で大学の卒業生や若い人たちとの関係を築けるのではないかと思っています。残りの時間は書にじっくりと向き合って過ごしていきたいと思っています。
大東文化大学は私にとってかけがえのない大学であり、このように授与式を行っていただき、様々なお話をすることができたことを本当に嬉しく思っております。今後も自分自身の成長を大切にしながら、大学との関わりを大事にし、その中でさらに自分を進めていければと思っています。今日は土橋先生と共に授与式に臨めたことを大変嬉しく思っており、生涯に一度のことだと思いますので、心から感激しております。ありがとうございました。