2017年度学位記授与式が3月22日、東京都千代田区有楽町の東京国際フォーラム・ホールCで行われた。
昨年度までは同施設のホールAで学位記授与式を行っていたが、今年度は同ホールが改修中のため午前と午後の2部制で行われ、ホールCに卒業生、ホールEに保護者が分かれて列席した。式典終了後、卒業生各自への学位記授与は板橋キャンパスで行った。
卒業者・修了者総数は2,693人。学士課程2,650人(文学部548人、経済学部365人、外国語学部355人、法学部409人、国際関係学部206人、経営学部380人、環境創造学部174人、スポーツ・健康科学部213人)、博士課程前期課程・修士課程36人、博士課程後期課程7人(内、論文博士2人)。
式典は午前の部(経済学部、法学部、経営学部、スポーツ・健康科学部)、午後の部(文学部、外国語学部、国際関係学部、環境創造学部)に分かれて行われ、各研究科、各学科、法務研究科の総代が壇上に上がり、学位記、修了証書を受け取った。学長賞には阿部友里香さん(国際関係学科)、葛原大智さん(スポーツ科)、本間政丞さん(スポーツ科)が表彰された。
学長告辞・門脇廣文学長
皆さんが4年間学んだ大東文化大学は、今から95年前、1923年、大正12年に、当時の国会である、「帝国議会」で決議されて建学した大学です。日本でも非常に珍しい大学です。今年の9月に95周年を迎えますが、いよいよ100周年へのカウントダウンが始まります。長い歴史を誇る大学です。
また、建学当初は、今でいうところの1学部2学科から始まりましたが、現在では、8学部20学科の規模の大学へと発展してきました。学生数は、現在、一学年約3000名、全体で12000名になります。国立、公立を含めて、全国で770以上ある大学の中で、大体30番目の規模の大学です。
皆さんには、まず、このような、長い歴史をもち、規模の大きな大学で学んだことに誇りを持って社会に出ていっていただきたいと思います。
本学は、わが国や東洋の伝統文化を尊重したうえで専門分野の知識を身につけて社会で活躍し、また、「東洋的な人間性」「東洋的ヒューマニティ」を備えた上で、世界に飛躍することのできる人材の養成を目指してきました。我々は、そのような能力を「大東学士力」と呼び、そのような人材を「大東人」と呼んできました。
さて、今年行われた平昌オリンピック、パラリンピックにおいて、日本はこれまでにない成績を収めましたが、それを観ていて感じたのは、皆が一つの「チーム」となって励むことの大切さです。スピードスケート女子のチームパシュートや女子のカーリングの活躍は、そのことを典型的に示していたと思います。一見、一人で戦っているように見えるスポーツにおいても、コーチがいたり、トレーナーがいたりして、決して一人でやっているわけでありません。
アフリカの諺に次のようなものがあります。
速く行きたいなら、一人で行きなさい。
でも、遠くへ行きたいのなら、皆で行きましょう!
いくら速く行けたとしても、一人で行ける距離などたかが知れている。しかし、皆で協力し助け合って行けば、自分が予想していたよりも遙かに遠くに行ける。この諺は、そのようなことを意味しています。平昌オリンピックでの日本の選手たちの活躍は、改めて、私に、そのことを教えてくれました。
皆さんは、これまでの学生生活のさまざまな場面でそのことを既に実感していたことと思います。今日を境に、皆さんは、新たな世界に踏み出すことになりますが、もう一度そのことをしっかりと意識してほしいと思います。そして、新たな世界で出会う新たな人々と、一つの「チーム」となって、自分がいま予想しているよりも遙かに遠くまで歩んで行ってください。
他の人と「チーム」となって共に働くためには、多様な人々を一人一人尊重することがなければなりません。そして、他の人と協働し、その人々を尊重するには、まず人の言うことにしっかりと「耳を傾けること」、すなわち「傾聴すること」です。人の言う言葉を「傾聴」することです。
「傾聴」とは、カウンセリングやコーチングにおけるコミュニケーションスキルの一つですが、人の話をただ聞くのではなく、注意を払って、より深く、丁寧に耳を傾けること。自分の訊きたいことを訊くのではなく、相手が話したいこと、伝えたいことを、受容的・共感的な態度で真摯に「聴く」行為や技法を指します。それによって相手への理解を深めると同時に、相手も自分自身に対する理解を深め、納得のいく判断や結論に到達できる、そのようにサポートするのが、この「傾聴」のねらいです。
人の話に耳を傾けて聴くこと、「傾聴」することが、他の人々と「チーム」になることの前提だと思います。常に人の話に耳を傾けて聴くことを忘れないようにしてください。
先ほど「東洋的ヒューマニティ」「東洋的人間性」と言いましたが、この「東洋的人間性」の根本にあるのは、私は、「『恕』の心」だと思います。これは、「思いやりの心」という意味です。他の人を思いやる心という意味です。私は、この「恕」、「思いやりの心」こそが「東洋的人間性」の根本にあるものだと思います。そして、他の人の話に耳を傾けるために、まず心に持っておかなければならないのが、この「恕」のこころ、すなわち「思いやりのこころ」だと思います。皆さん、この「恕」という言葉を忘れないでください。
さて、皆さんは、今日、大学を卒業される訳ですが、卒業しても、皆さんは永遠に「大東人」です。
卒業するに当たって、いまお話ししました三つの言葉、「恕」「傾聴」「遠くへ行くなら、皆で行こう!」、この三つの言葉を「大東人」として、ぜひ覚えてください。
最初に持つべきものは、「恕」です。「思いやりの心」です。まず心にこれを持ってください。次に、「傾聴」という言葉です。「人の話しには耳を傾け聴く」ことです。最後に、他の人と一つのチームとなって「皆で遠くへ行く」。このように生きていってほしいと願っています。
この三つの言葉、これが私が皆さんに贈る餞の言葉です。
大東文化大学は、「大東人」である皆さんが、卒業後も、いつでも戻って来ることのできる場所です。ふと学生時代のことを思い出したら、いつでも戻って来てください。
今年リーグ戦を全勝優勝したラグビー部、予選会を2位で通過した男子駅伝、仙台の杜の都駅伝で準優勝した女子駅伝、全日本大学選手権を3連覇したテコンドー部、全日本大学選手権で初優勝したバスケットボール部、そして今回の平昌パラリンピックにおいて混合10㎞リレーで第4位入賞を果たした阿部友里香さんなどを始めとして、大東文化大学の運動部の活躍は、目を見張るものがありました。大東文化大学の運動部の活躍は「大東スポーツ」として世に知られています。卒業後も、是非、これらの運動部の応援に駆けつけて来てください。
また、半世紀を超える歴史を持つ混声合唱団や吹奏楽団、管弦楽団などの定期演奏会や、その他の文化部の活動にも、是非、お出かけください。
皆さんの応援は、後輩の皆さんに大きな勇気を与えるものと思います。また、後輩たちの活躍は、きっと皆さんにも勇気と希望を与えてくれるものと思います。
大東文化大学はいつでも、皆さんが帰って来ることを待っています。
最後に、改めて、卒業生の皆さんには、「恕」のこころに基づいた東洋的なヒューマニティ、すなわち、東洋的な人間が持つ感性のすばらしさをいつまでも持ちながら、多様な人々が参加する社会において、さまざまな価値観を持っている多くの人々と協力しながら、一つのチームとなって、自らを成長させ、思う存分に活躍されることを期待しています。
理事長祝辞・大橋英五理事長
卒業おめでとうございます。まず、4年間皆さんを支援してくれた保護者に感謝してください。そして、大学で学んで身につけたことを忘れないようにしてください。
これから皆さんは社会に出ていくわけですが、次のことを大事にしてください。
1つは、専門的な見識や知識を大事に発展させ継承していってください。
2つ目に大東文化大学は、東洋や西洋の文化を共生することを理念にしています。他の人の文化を大切にし、自身の文化を共有するようにしてください。
今後ますます厳しい社会になっていくでしょう。人口減少社会、グローバルや新しい情報化時代を迎えます。皆さんが社会に出て活躍していく過程で挫折を経験するでしょう。そんな時は自分自身の考えをしっかり見つめなおし、他の人の考えを聞き、柔軟に取り入れるように心掛けてください。それこそが「共生」になります。
困ったことや嬉しいことがあったときは大東文化大学に帰ってきていつでも報告してください。大東文化大学はあなたたちの大学ですから。
卒業生代表挨拶
〈午前の部〉スポーツ科学科・森田彩夏さん
思い返せば4年前、私はこれから始まる大学生活に希望と不安を抱きながら本校の門をくぐりました。中学生の頃から、部活動の顧問の影響もあり、子どもの成長に携わることができる「教員」という職に魅力を感じ、教師になりたいという夢をもっていたことから、保健体育教師になるという目標をもって大学生活をスタートさせました。
入学して数日後に行われた学科のスタートアッププログラムの際に、副免許で小学校の教師を目指している先輩の話に大きな感銘を受け、小学校教員の免許取得にも挑戦することを決めました。びっしり詰まった2・3年次の時間割や東松山キャンパスと板橋キャンパスとの行き来などに萎え、採用試験の勉強がなかなか手につかず、本当に教師になりたいのか悩んだ時期もありました。しかし、たびたび参加した合宿勉強会などで、志を同じにする仲間たちが迷わず努力する姿をみていると、「悪いことばかり考えず挑戦しよう」という気持ちに変わり、つらい時を乗り越えることができました。また、教職課程センターの先生方に親身に話を聞いて頂いたり、教職について教えて頂いたりして、より一層教育現場に興味を持つことができました。このようなたくさんの方々の支えにより、私は、埼玉県の小学校教員採用試験に合格することができました。お世話になった皆さま、本当にありがとうございました。私自身が、大学生活を通じて「人との出会い」から多くのことを学ぶことができたことから、「人を好きになり、人から学ぶ」という気持ちを持った人間になってほしい、そのような子ども達の支えになる教師になりたいと思っています。
スポーツ科学科の授業は、実技だけでなく、さまざまな座学系の講義もあり、非常に充実したものでありました。野外実習での自然の中での仲間との生活は、かけがえのない思い出になりました。また、年1回、学生が企画・運営する運動会では、先生方も参加され、学年、クラスに関係なくつながりを深めることができました。また、運動部に所属している学生が多く、それ以外でもサークルの活動で結果を残している学生もいて、目指すところは違っても、目標に向かって一生懸命に取り組み、お互いに奮起し合って日々努力しているところもこの学科だからこそ分かることだなと感じました。
2年生の冬に、父親が病気で倒れました。中々現実を受け入れられないまま、大学を続けることはできるのか、これから先どうすればいいのかなど、不安になりました。アルバイトをしながら授業を受け続けていましたが、その内、この状況を家族で何とか乗り越えたいと思うようになりました。
私たちは、これから、それぞれの夢や目標に向けて新たな一歩を踏み出します。しかしその先には、さまざまな困難が待ち受けているでしょう。その困難に立ち向かうために、本校の卒業生であることを誇りにもち、自ら考え、決断し、選んだ道を歩んでいくことを約束いたします。
〈午後の部〉教育学科・笹川 泉さん
4年前の入学式、広大で緑豊かな東松山キャンパスで、これから始まる新しい出会いやキャンパスライフに胸を膨らませ大東文化大学の門をくぐったことは今でも鮮明に覚えています。それから瞬く間に4年の歳月が流れ、本日、卒業式を迎えることになりました。
4年間にわたる学生生活の中で、私は、様々な人と出会い、多くの経験をすることができました。教育学科において、小学校の教員になるという夢に向かい、多くの先生方、先輩方、同期、後輩たちに見守られ、時に支え合いながら日々学びを深めていきました。1,2年次における教養課程では、専攻にとらわれず、広く学術の基礎を学び、人間性を育むために必要な知識を得ることができました。学年の進級につれ、本格的な模擬授業を行いながら実践を積んだ教科教育法や現場のリアルを通して学びを深める教職実践演習など、将来の糧となる内容は今でも心に刻まれています。
昨年は、教育実習を通して、実際に現場に立つことによって、実体験を肌で感じることができました。また、教員採用試験を受験するにあたり、遅くまで学校に残り、時に不安な気持ちになりながらも、周囲と励まし合い、必死に勉強したことは強く印象に残っています。4年間を通して、密度の濃い時間を過ごすことができました。
特に3,4年次のゼミ活動では、大学近隣の小学校に通う子ども達を対象に、工作やレクリエーションのプログラムを通して地域児童との交流を深める「にこにこプロジェクト」を開催しました。この活動は、遊びや劇など子ども達が楽しめる内容を企画しつつ、大学生と子ども、そして子ども達同士の交流を深めるためにはどのように工夫をしたらよいのか、年間を通して考えを深め、工夫を凝らしてきました。2月上旬に行われた4年生最後の「にこにこプロジェクト」では、総勢100人を超える子ども達が集まってくれました。子ども達の「たくさんの場所を巡りたい」という希望から、大東文化会館全館を使っての活動を行いました。あちこち動き回る子ども達を見守ったり、臨機応変に対応することに苦労しながらも、子ども達の「また来たい」「友達ができた」、保護者の方からの「ありがとう」の声を聞くことができたことは、大学生の立場から、地域の子ども達に少しでも役に立つことができたかなと嬉しく思います。また、この活動を通して、子ども達は活動中にどんなことを考えているのか、言葉や行動の裏にはどんな想いがあるのかなど、子どもへの理解を深めることができ、将来につながる貴重な体験をすることができました。
さらに学業以外にも、私はアカペラ部ハーモニーコリンに所属し、歌を通しての活動を行ってきました。日々の活動や定期ライブ、大東祭などを通して、沢山の仲間に囲まれ、共に歌うことがこんなにも素敵なことなんだと感じることができました。また、学童保育の教室で実際に歌わせていただく機会もあり、子ども達や先生方が一緒に歌う姿を見て、音楽というツールで心が通じ合うことの素晴らしさを感じることができました。
4月から私たちは、それぞれの道に向かっての新たな生活が始まります。そこには、楽しいことだけでなく、苦労することもあるでしょう。しかし、大東文化大学で過ごした4年間の思い出や誇り、感謝の気持ちを胸に、自分らしさを忘れずに歩んでいこうと思います。