既に知っておられる方も多いと思いますが、大東文化大学国際関係学部教授・押川典昭先生が読売文学賞、研究・翻訳賞を受賞されました。
押川先生が翻訳されたのは、現代インドネシア文学を代表する大河小説、プラムディヤ・アナンタ・トゥールの「人間の大地」四部作(『人間の大地』、『すべての民族の子』、『足跡』、『ガラスの家』)で、翻訳を終えるまでに20年の歳月を費やしたそうです。翻訳したページ数は、何と2800ページにものぼります。
受賞に関連する記事詳細については読売新聞のサイトに譲りますが、20年と一口に言っても、人が生まれて成人するまでの年月です。それだけの長い時間を費やし、中途で投げ出さず仕事を完遂させた押川先生の言葉には学ぶべきところがあります。
「インドネシアだけでなくほかのアジア各国の文学を専攻しても、大学に勤務先がみつかるなどその先の保証があるわけではない。それでも一生懸命やってみてほしい。きっと、自分を賭けるに足る作品に出会えるはずです」(読売新聞「読売文学賞の人6」2008年2月11日 より引用)。
インドネシア文学を純粋に愉しむ以外にも、押川先生はこの作品の何に惹かれて自分を賭けたのか、あるいはこの作品の何が押川先生を支え翻訳を完遂させるに至らしめたのか、そんな観点から作品を読むこともできますね。
インドネシア語を履修していない学生だからといって、読まない理由はありません。新年度が始まる前に一読してみては?
人間の大地4部作
・プラムディヤ・アナンタ・トゥ−ル2007『ガラスの家』(プラムディヤ選集7)押川典昭訳 めこん
・プラムディヤ・アナンタ・トゥ−ル1998『足跡』(プラムディヤ選集6)押川典昭訳 めこん
・プラムディヤ・アナンタ・トゥ−ル1988『すべての民族の子 上・下』(プラムディヤ選集4・5)押川典昭訳 めこん
・プラムディヤ・アナンタ・トゥ−ル1986『人間の大地 上・下』(プラムディヤ選集2・3)押川典昭訳 めこん
読売文学賞の詳細は以下のアドレスから
◆読売文学賞