大東文化大学国際関係学部では、2年次の学生(希望者のみ)を対象に現地研修が行われています。今回はインドからの報告が届きましたのでお知らせします。
インドに足を踏み入れた時、私が受けた第一印象は、インドには匂いがあるということだった。その匂いは砂埃とカレーのスパイスが混じったようなものだった。デリー空港に降り立った私たちは、インド人ガイドのポーラ爺(ジイという発音は、ヒンズー語・ウルドゥー語では尊敬の意)に連れられて、ホテルがあるカロルバーグにバスで直行した。カロルバーグには大勢の人が溢れていて、同時にゴミや土、野良犬まで溢れていた。ホテルに入って私は早速風呂に入ったのだが、汗の匂いまでインドになっているのには仰天した。長旅に疲れていた私は、着いた当日はすぐに寝た。
インドでのカルチャーショックは凄まじいものであった。まず水道水がしょっぱく、飲めばすぐ便所行き。当たり前だが、食べ物は全部カレー。始めの内は皆、旨い旨いと平らげていた。しかし、四五日すると段々と胃や腸の状態が悪くなり始め、体調不良を訴える者が後を絶たなくなった。インド料理に使われる油が体に合わず、加えてカレーばかりを食べるインドのライフスタイルに体が順応できなかった所為もある。私も下り腹になり、カレーを食べると、すぐに便所に行かなければならなかった。観光地に行けば、売り子がしつこく商品を押しつけてくる。十ルピーと言われ、金を出すと、十ドルだと言われる。日本人だと分かると、売り子たちが堰を切ったように近づいてきてビックリする。またタクシーに乗ると、運転手と手を組んでいるお店に連れて行かれ、その店で日本人用価格の商品を買わされる。所謂ぼっ手繰りであるが、インド人の人懐っこさと巧みな販売技術に翻弄され、「断れない日本人」が出てしまったこともあった。貧富の差も激しかった。観光客を見つけると、金を恵んでくれと赤ん坊を抱きながら母親が手を出してくる。小さい子供までもが同じことをしていたのには眼を疑った。
腹を下し始めた頃から言語学習が幕を開けた。Jawaharlal Nehru大学というインド独立後の初代首相の名前の付いた大学で勉強することになった。授業はウルドゥー語と英語で行われ、ペースも速く、始めは付いて行くことができなかった。なので、大学で日本語を専攻しているという女学生を雇い、ウルドゥー語と日本語の通訳をお願いした。授業のペースに慣れてくると、徐々に先生のウルドゥー語も何となくだが分かるようになっていった。早速、覚えた単語や会話表現を町中のインド人に使ってみるが、通じる人と通じない人に別れた。理由は簡単であった。私はウルドゥー語班なので、インド人に対して普通にウルドゥー語を使っても通じると思っていたのだが、それが間違いであった。例えば、「アーダーブ」という表現は「こんにちは」の意味なのだが、この表現はイスラム教徒独自の挨拶なので、これをインド人に対して使うと「俺はムスリムじゃねえ! ヒンドゥーなんだよ」と言っているような目で睨まれることがある。あるインド人に「アーダーブ」と言ったら「ナマステ」と強い口調で言い返されたので、この事実に気付いたのである。言語能力よりも文化や宗教を理解することの方が重要だということをインドから教わったのであった。
現地研修が終盤に差し掛かる頃、我々はラージャスターン州のジャイプールに行った。そこには山間に聳え立つアンベール城と湖に浮かぶ水の宮殿があった。アンベール城には象の背中に乗って登ることができる。象の背中に揺られながら、アンベール城からのインドの雄大な自然の眺めは最高であった。城の中は迷路のようになっており、壮大であったので全てを見るのは難しい。アンベール城の近くに湖があり、そこに水の宮殿があった。大きな湖の真ん中に堂々と構える水の宮殿は、とても神秘的且つ不可思議であった。我々が訪れた時は、運良く湖の水が溜まっていたので、美しい水の宮殿を見ることができたのだが、普段、水は溜まっていないそうである。インドに行ったら是非、この二つは見て来てほしい。
見る物は、何も自然や建築物だけではない。インドに行ったら映画も観てほしい。インド映画はアクション、踊り、歌、笑い、全てが含まれている。インドの文化を理解いするのには持って来いである。言葉は分からなくても、インド映画は視覚的に楽しむことができる。インド映画は長いので、途中にインターバルが入る、日本では考えられない。映画の最後は、登場人物全員が歌って、踊って、ハッピーエンドがインドの映画スタイルである。インド人の歌と踊りに対する情熱を感じた。
最後に、私のインドに対する感想としては、インドは不思議な国だということである。なぜなら州を跨ぐと、食べ物や文化が違ってくる。しかも、人の顔までも全く異なり、使っている言葉も異なってくる。インド人のライフスタイルや文化は、日本人には理解できない部分が少しはあるが、それを理解しようと努めるのも勉強である。インドはとても広いので、何処に行っても全て新鮮な経験のできる国であった。バフット・アッチャー。
国際関係学科2年 早川龍太郎