2019年6月29日、大東文化大学看護学会が開催されました。第1部の総会で会則の決議に続き、1,2年生の学生を含む運営委員が選出されました。次いで今年度の事業計画が審議され、学術講演会の開催、学会誌の発刊を定期的に行っていくことも決議されました。第2部として「救急医療における看護の役割を考える」のテーマの元、埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センター看護師猿谷倫史先生、八戸市立市民病院院長兼臨床研修センター所長今明秀先生を招いての講演会が開催されました。
埼玉県ドクターヘリは2007年10月に全国で12番目のドクターヘリとして運航を開始しましたが、猿谷氏はその当初からフライトナースに任命された、フライト回数800回を超えるベテランです。
フライトナースとは、病院外の救急現場へヘリコプターで出動し、緊急性が高く重症な、あらゆる年代の患者とその家族を対象として、看護を実践し、現場での初療や重症患者の看護を継続しつつ、救急車やヘリコプターで搬送する看護師です。TVドラマなどで脚光を浴びる存在ですが、実際の活動についてはあまり知られていません。氏は病院内での勤務や環境整備という地味とも見える日常勤務の様子から語り始め、東松山キャンパスで救急患者が発生した場合、何分でヘリが到着できるか、という想定を投げかけ、看護学生はその救急医療の世界に一気に引き込まれました。
そして救急医療における看護の役割とは、狭義の看護行為のみならず、初期治療がスムーズに行われるよう万全の準備をし、現場での業務を滞らせないようにする潤滑油の役割がある、とまとめられました。
八戸市立市民病院の院長兼臨床研修センター所長の今明秀氏は「ブランドになりたい」という演題で講演されました。氏は救急医療界におけるカリスマとして知られ、先日はNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』にも登場されました。地方の少子高齢化と医療の過疎化は青森県でも顕著であり、医師は氏一人、看護師も不足していたという病院で、医師としての思いを遂げるための努力を続けてこられました。全国から救急医・看護師が集まり、ドクターヘリとドクターカーの同時出動システム、救命病棟130床、移動緊急手術室まで有するという日本に類を見ない一大救急拠点にまで築き上げるための戦略が「ブランド化」でした。「劇的救命」をコンセプトにし圧倒的な救命実績を挙げるとともに、論文・教科書の執筆、マスメディア、インターネットの活用によりセンターの知名度を上げ、国会まで動かして新しい試みを次々と実行していく様が圧巻のプレゼンテーションにより示されました。八戸市民の75%が地元の救急医療を「よい」と評価していることで、それらの活動が単なる外向けのパフォーマンスではなく、地域に根ざした信頼を得ていることを表しているのだとわかりました。
参加した学生からは「救命救急の看護師・医師どちらもの話が聴けてよかった」、「誰かを救う素晴らしさ、厳しさを知り、医療に関わるのは簡単なことではないのだと改めて感じた」「自分がどんな看護をしたいのか目標・理想が見つかったような気がする」、「体制づくりまでのポイントなども話して下さって、自分の夢を確立させるためのプロセスが学べた」など、多くの感想が寄せられました。
当講演会はホームページでご案内しましたが、東上地域大学教育プラットフォーム(TJUP)や地域連携センターなどを通じ近隣の大学・医療系専門学校、医療機関に周知していただいた結果、それぞれ4校、3病院から多くの参加者がありました。これらの方々からも「普段聴けない話を聴けたのでとても満足」「今後もこのような機会を設けて欲しい」といった好評が寄せられました。今回の講演会開催にあたり、当学科は大きな学びを得ました。ご講演をいただきました猿谷先生、今先生、また外部より聴講にお出でいただいた学生や保護者様、看護師の皆様、学内関係者の皆さん、誠にありがとうございました。