昨年度に引き続き、今年度も新型コロナウィルス感染拡大防止のため、Web会議システム(ZOOM)にて定例の人文科学研究所報告会を開催いたします。研究班員以外にも聴講を可としております。希望される方は、①所属、②氏名、③メールアドレスをご記入の上、人文科学研究所(jinbunken@ic.daito.ac.jp)まで申し込みください。後日招待リンクをお送りいたします。
日時 | 2021(令和3)年11月27日(土)13:30~ |
---|---|
会場 | オンライン研究報告会(ZOOMにて開催) |
所長挨拶 13:30~13:35
報告1 13:35~14:05
題目 | 景教の中国伝来はヨーロッパでどのように語られたのか |
---|---|
報告者 | 新居 洋子/中国三教と景教の相互交渉の研究班(代表:武藤 慎一) |
研究発表内容
明末の1625年、西安にて景教碑が偶然発見され、在華イエズス会宣教師や天主教信者であった士大夫らが、相次いで碑の発見の顛末や碑文そのものについて漢文で発表した。布教の拡大をめざす在華宣教師にとってこの碑は、キリスト教と中国との接触の歴史の長さのみならず、過去に王朝の公許のもとで布教が行われたことを示す重要な遺物でもあり、そのため彼らの文章では景教と自分たちの「天主教」との繋がりが盛んに強調された。その一方で、景教碑の発見は17~18世紀に、やはり在華宣教師を経由してヨーロッパへも情報が伝わっていく。本発表では、ヨーロッパへ伝わった景教東伝の物語が、いかに中国キリスト教布教史の一部として位置付けられ、さらにシノロジー(中国学)の形成に関わっていくのかについて述べる。
報告2 14:10~14:40
題目 | 周代における列鼎制度の崩壊と諸侯の台頭 |
---|---|
報告者 | 吉田 篤志/出土資料による中国古代文化の研究班(代表:吉田 篤志) |
研究発表内容
中国周代には“列鼎制度”が存在した。これは鼎の保有数による周王(天子)や諸侯を権威付ける(格付ける)制度であった。諸侯がこれを破ることは周王に対する僭越行為とみなされ、本来ならば周王から懲罰を受けることになるが、実際には頻繁に行われていた。このことは周王の権威が低下消滅しつつあったことを物語っている。当報告は、出土文物(青銅器)や古典文献(「左伝」「史記」「戦国策」等)からこれらの様相の一斑を明らかにしたい。
報告3 14:45~15:15
題目 | 刻帖書法に付着する他者 ―名跡に反映する摹勒者・鐫刻者の技術と解釈- |
---|---|
報告者 | 澤田 雅弘 / 中国鐫刻基盤研究 研究班(代表:澤田 雅弘) |
研究発表内容
石や木に刻された字跡には、必ず鐫刻(鑿で刻する)者の技術や解釈が反映し、摹勒(二度の籠字)を経た刻帖(名跡を集刻した法帖)や翻刻・集字の字跡には、さらに双鉤(籠字)者の技術や解釈が反映する。この原理は自明で、書法を論ずる場合、これら筆者以外の他者の要素を等閑視することはできない。そもそも刻帖の場合、双鉤・鐫刻の介在でどのような問題が生じるのか。唐代の摹本『万歳通天進帖』(697)を刻入する明代家刻の名帖『真賞斎帖(火前本)』(1522)、『停雲館帖』(巻第二1538)、及び清代の奉勅『三希堂石渠宝笈法帖』(1750)の三者について、「姨母帖」「初月帖」「廿九日帖」を例に、問題を具体的に検出する。