6月15日、「企業と経営者」。
講堂はいつもとは違う異様な雰囲気に包まれていた。当日の講師は株式会社ウインローダーの髙嶋民仁社長。通常、講師をしてくれる社長さんは一人だ。しかし、その日の講堂には、髙嶋社長を先頭にぞろぞろと11人も現れた。例年、テンションは高めだが、この日の社長はそれにも増して気合いが入っていた。アメリカのシリコンバレーの視察を終えて、非常に多くの刺激を受けてきた。そこで経験したワークショップを一緒に視察に行った仲間たちとここで再現したい、ということだった。
物流とエコを組み合わせたイノベーティブなビジネスの「エコランド」の展開を紹介する講演の後に、いよいよお楽しみのワークショップが始まった。11人の経営者たちはそれぞれ講堂に散らばり、グループに分かれた学生諸君と「本音トーク」を行う。髙嶋社長によれば、11人の社長は「ドラえもん」、学生諸君は「のび太」になってもらい、物流に関する質問を直接ぶつけてもらうというものだった。
ドラえもんはワンパターンだ。しかしいつもイノベーティブである。それはなぜか。のび太が何らかの問題に直面し、ドラえもんに泣きついてくるからだ。ドラえもんはのび太の問題を解決する道具をポケットから出す。それは現代には存在していないが、未来では当たり前になっているアイテムだ。そして、例えば携帯電話のように、かつてドラえもんが未来の道具だと紹介したアイテムが今の時代では当たり前になっていることも少なくない。
「究極の物流は『どこでもドア』だ」と主張する髙嶋社長。人口減少による人手不足とドローン技術などの技術進歩に加えて、アマゾンなどの大手外資の本格参入がささやかれる中、物流業界は目まぐるしく変わろうとしている。その渦の中に飛び込み、新結合を探し当てて実現させる、イノベーションを起こしていける企業だけが次のステージに残っていく。そしてそれを支える起業家的人材(Entrepreneur) が求められている。未来を担う若者を育てる立場として、大学教員の重責も深く実感させられた90分であった。
(文責:國府俊一郎 大東文化大学経営学部准教授)